『はじめよう! プロセス設計 ~要件定義のその前に』を読んだ

同僚に借りて読んだ。
三部作の二番目のようだが、前作を知らなくても特に問題なく読めた。

「設計」や「要件定義」という言葉がタイトルに入っているが、本書の内容はシステム設計などに限定されるものではなく、もっと普遍的なことを扱っている。
仕事とは何か、ということを解きほぐしていき、それをよりよいものにするためにはどうすればいいのかを考えていく。

プログラマやプロジェクトマネージャー以外にもオススメできる。

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まず、文書が平易で読みやすい。難しい専門用語は使われておらず、予備知識が何もなくても読み進めることが出来る。

それから、随所に載っているイラストが分かりやすく、理解を促してくれる。
この手の書籍のイラストは、ただ「柔らかい雰囲気」や「手に取りやすい雰囲気」を出すだけのもので、ほとんど意味がないことが多い、と個人的には思っている。 ただ単に本文の内容を繰り返しているだけだったり。
だが本書のイラストは、本文の内容を別の角度で表現したり、分かりやすく図解したり、ちゃんと意味のあるものになっている。
イラストレーターの略歴を見ると、著者が経営している会社の設立にも参加しているらしく、単なる外注先ではなくビジネスパートナーのような存在らしい。
だから、著者の主張を理解して、本文の内容を上手く補完するようなイラストを描けるのだろう。

タイトルにもある通り、プロセスというものが、本書のメインテーマになっている。

プロセスとは、仕事を達成するための過程や手順であり、その仕組みのこと。
そして、仕事は連鎖していくものであり、その連鎖のこともプロセスであると言える。

連鎖とはどういうことか。
仕事を行うためには、材料や道具が必要になる。
材料や道具を使って何らかの活動を行い、成果を生み出すのが、仕事。

例えば料理をするという仕事を行うためには、食材や調理器具が必要となる。だから、料理をする前にまず、食材を買う、調理器具を準備する、といった仕事が必要になる。それらの仕事の成果として食材や調理器具が手に入り、それを使って「料理をする」という仕事を行う。その成果が「完成した料理」だが、さらにそれを材料として、「料理をテーブルに運ぶ」という仕事を行う。

このようにして、仕事はつながっていく。
この連鎖が上手くいかないと、滞留が発生したり、仕事が非効率になったりしていく。

こういったことは、多くの人が考えていることだとは思う。
段取り、と呼ばれたりするもの。ゴールを達成するために、仕事を分解し、まず何から手をつけるか考える。
そういう意味では、目新しくて斬新な話というわけではない。
本書でも、仕事で何らかの成果を出している以上、プロセスは既に存在していると書いている。
問題なのは、プロセスを意識的、計画的に行っていないことだという。

多くのプロセスは、なし崩し的、自然発生的に生まれたものであり、あまり深く考えずにそれを踏襲し習慣になってしまっている。
仕事が上手く進まない原因がここにある。
プロセスをよく見直して、良質なプロセスに変えていく必要がある。

では、良質なプロセスとはなんだろうか。
良質なプロセスであるためには、価値ある成果を生み出すものでなければならない。

プロセスや業務の見直しというと、どうしても、単なる効率化ということに目が向いてしまう。
だがそれでは意味がない。
不必要な業務や的外れな施策を効率化していては本末転倒だ。
価値を生む、ということを主軸にしないといけない。

そして、価値ある成果を生み出すプロセスとは、顧客が抱えている課題を解決するプロセスである。
ビジネスとは、顧客の問題解決を支援することである。だから、最終的に顧客の問題解決にたどり着かなければ、そのプロセスには価値はない。
本書の後半では、顧客が自身の課題を解決していくプロセスを「CX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)」と呼び、CXを軸にして、プロセス設計の仕方を見ていく。

本書によれば、プロセスを設計する上で重要なのは、ゴールをしっかりと定義し(ビジョンや要件の明確化)、そのゴールから逆算して大まかな流れを考え(バックキャスティング)、そうやって描いた流れを細かいステップに分割して(ブレイクダウン)、粒度の細かなタスクに落とし込んでいくことだと言う。

ゴールを明確にすることやゴールから逆算して考えることも、よく言われることであり、目新しい話ではない。
こういう、当たり前のことを自覚的に、丁寧にやっていくことが、大切なのだろう。

冒頭で「システム設計に限定されるものではない」と書いたが、プロセス設計とはそもそも仕事に限定されるものではない。
本書で説明している考え方や設計は、生活全般に当てはめることが出来る。

本書の最後でビジョン、戦略、兵站といった話題についても少し触れられているが、「よりよい仕事の進め方」だけの本ではない。
もっと、応用範囲の広い話である。

この記事で紹介されている、「無理をするなら、ちゃんとした軍隊でなければ」というセリフを思い出した。
大学院中退、就職。そして1年後。 : ボルボラのブログ

しかし、結果と経験からいえば、心だけで「決意する」ことは、何の効用もなかった。努力するには準備が必要だという考え方がなかった。すべてのステップを飛ばして、いきなり「努力する」→「成果が出る」というプロセスを実行できるものだと信じていた。
(中略)
現実的には、努力するための体勢を整える作業なくして、努力できるということはない。もちろん広い世の中には例外もいるだろうが、自分がその例外だと考えるのは、たいていの場合悲しい結果にしかならない。

この引用の通りで、兵站やプロセスの連鎖というのは、人生においても重要になる。
ゴールに到達するためには「相当な努力をする」というプロセスが必要だとする。そして「相当な努力をする」というプロセスを実行するためには、大抵の場合、その材料として「健康な心身」が必要になる。だからまず、「努力をする」というプロセスに先立って、「睡眠」や「運動」といったプロセスを実行して、その成果として「健康な心身」を手に入れなければならない。

仕事にしろ私生活にしろ、何か達成したことがあるのならば、本書で紹介されているプロセス設計の考え方を実践していくことで、その実現可能性を高めていくことが出来るはずだと思う。